生國魂(いくくにたま)という名前からしてエネルギッシュな神社ですが、創建やご祭神を知ると、いかに霊験あらたかな神社かがわかる生國魂神社。
今回はその生國魂神社についてまとめました。
ご祭神とご利益、天皇の即位儀礼「八十島祭り」との関係や、天孫が授けられた宝物「十種神宝」との関係、大阪三大夏祭りなどを中心にまとめています。
さらに、境内社であり悩める女性の強い味方、鴫野神社とがけっぷち占いについてもご紹介していますので、参拝の参考にしていただければと思います。
地元民からは「生玉(いくたま)さん」の名で知られるお社
生國魂神社は、地域では「生玉さん」という愛称で親しまれていますが、別称として「難波大社(なにわのおおやしろ)」とも呼ばれており、大阪の中心地「難波」を称することからも、重要なお社であることがうかがえます。
創建は2700年前ともいわれ、神武天皇が日向を発ち、奈良盆地と周辺地域を統治する際にこの地にご祭神である生島神(イクシマノカミ)(以下イクシマ)、足島神(タルシマノカミ)(以下タルシマ)をお祀りされたことが起源です。
戦前の神社制度の中では最高位になる官幣大社の1社という位置づけを得ていたことや、後述する宮中祭祀との関連からも、大阪を代表する古社と考えて良いでしょう。
生國魂神社のご祭神とご利益
生國魂神社は、主祭神となるイクシマ、タルシマの2柱の神様と、相殿神となる大物主大神(オオモノヌシノオオカミ)(以下オオモノヌシ)の、計3柱の神様がお祀りされています。
また、そのほかにも多くのご祭神が境内社としてお祀りされています。
境内をぐるりと回れば諸願すべてが成就するといっても過言なく、さまざまなご利益のある神様が集結しています。
【主祭神】イクシマとタルシマ
主祭神としてお祀りされているイクシマ・タルシマは、伊邪那岐命(イザナギノミコト)・伊邪那美命(イザナミノミコト)の夫婦神の国産みによってお生まれになった神様です。
イクシマは生国魂神、タルシマは咲国魂神という別の名前で語られることもあり、「国魂」とは、土地に宿った霊魂を意味します。そのため、イクシマ・タルシマの2柱の神様はともに、国土を守る神様であることがわかります。
「イク」とは生成、繁栄、進歩を意味し、「タル」とは成熟、完成、満ちることなどを意味することから、どちらも国土の発展、生命の発展を幸う神様といえるでしょう。
国産みの結果お生まれになった2柱というところから、縁結び・夫婦円満・子宝・安産といったご利益がある神様と言われています。
【相殿神】オオモノヌシは不思議な神様
オオモノヌシとは、大=大いなる、物=不思議な力に優れている、主=王様という意味から成り、水の神様や雷の神様という性質を持つ神様を指します。そのため、五穀豊穣や商売繁盛、酒造り、縁結び、国土の開発、厄除けなど多くのご利益を得られる神様として篤く信仰されています。
しかしオオモノヌシは、大国主命(オオクニヌシノミコト)や大己貴(オオムナチ)などのほかの神様と同一視されることもあり、混乱のもととなっています。
生國魂神社では、国土の開発というご利益から関連のある神様としてオオモノヌシもお祀りされているのかもしれませんが、なぜオオモノヌシをお祀りしているのかは不明です。
その他のご祭神
生國魂神社には、主祭神、相殿神のほかに、以下の11のお社が境内社としてお祀りされています。
住吉神社
底筒男命(ソコツツオノミコト)、中筒男命(ナカツツオノミコト)、表筒男命(ウワツツオノミコト)が祭神であり、航海・厄除けのご利益があります。
天満宮
学問の神様として知られる菅原道真公がお祀りされています。
皇大神宮
皇大神宮は太陽神である天照皇大神(アマテラスオオミカミ)(以下アマテラス)をお祀りするお社のため、東向き(太陽の昇る方向)に鎮座しています。国土平安、国家泰安の神様です。
城方向(きたむき)八幡宮
社名の「きたむき」は「北向き」から来ており、大阪城の守護のために鎮座された勝負の神様です。鬼門の守護をしていたことから方災除けや厄除けのご利益も得られます。
鞴(ふいご)神社
鞴とは火をおこす道具のことです。大阪天満には江戸時代、有名な鞴職人がいたことから、摂社として創建されたのではないかといわれています。鉄鋼・鋳造・台所の神様としてお祀りされています。
家造祖(やづくりみおや)神社
社名からもわかるように、建築の神様です。ご祭神とされている2神、手置帆負命(タオキホオイノミコト)と彦狭知神(ヒコサチノカミ)はどちらも木工や建築の神様と知られています。家庭円満や新築のご祈願にもご利益があるため、業界人だけでなく、一般の方も参拝することでご利益が得られます。
浄瑠璃神社
文楽・浄瑠璃の神様として、近松門左衛門をはじめ、文楽や浄瑠璃の関係者を鎮座した神社です。芸能関係で大成したいと志す人から信仰されています。
精鎮社(せいちんしゃ)
えべっさんとして関西では絶大な支持を誇る事代主命(コトシロヌシノミコト)と比咩(ヒメ)大神がお祀りされています。ここでいう比咩大神は七福神の1柱にも数えられる女神・弁財天のことです。
鮮魚・釣り・商売繁盛・金運上昇の神様として名高いお社になっています。
以下の3社は朱色のお社でとても目を引きます。
鴫野(しぎの)神社
財運・美容・芸能・家内安全の神様です。
詳しくは後述しますが、縁切り、縁結びにもご利益が高く、女性に人気のお社です。
源九郎(げんくろう)稲荷神社
源九郎稲荷大明神は、奈良県吉野町にある源九郎稲荷からの分祀といわれています。同じくお祀りされている八兵衛大明神は芸能の神様であり、とくに歌舞伎役者から崇敬されています。
この2柱をお祀りする源九郎稲荷神社は、商売繁盛・五穀豊穣のほか、歯痛封じにもご利益があります。
稲荷神社
倉稲御魂神(クラウカノミタマノカミ)をお祀りする稲荷神社は、五穀豊穣・商売繁盛・除災招福のご利益を得られます。
ホントにぐるりと回れば諸願すべてが成就しそうですね
唯一無二の建築様式
桃山時代からの建築様式「生國魂造(いくたまづくり)」は、この生國魂神社だけの独自の建築様式です。
もともと生國魂神社は現在の大阪城の場所にあったのですが、秀吉によって大阪城が築城される際、今の場所(大阪市天王寺区生玉町)に移転を余儀なくされました。
移転後、本殿が造営され、幣殿と本殿が一つ屋根で繋がっています。正面屋上に千鳥破風・すがり唐破風、その上にさらに千鳥破風と、破風を三十に重ねる建築はほかにないものだそうです。
大坂夏の陣や太平洋戦争など幾度かの焼失や倒壊もあり、現在はコンクリート造、銅板葺きと頑強な造りになっていますが、破風を重ねる建築様式は踏襲されています。
建築好きでなくても気になるポイントですね
天皇の即位儀礼「八十島(やそしま)祭」との関連
八十島とは日本の国土全体を指す言葉であり、八十島祭は、かつて行われていた天皇の即位儀礼の1つです。
平安時代から鎌倉時代中期ごろまで行われたと考えられており、天皇が即位されて最初の新嘗祭である大嘗祭のあった翌年に行う祭祀でした。生國魂神社のご祭神であるイクシマ・タルシマと、生國魂神社の境内社としてお祀りされている住吉神を祀り、国土の発展や皇室の安泰、国家安泰のためにお祈りを捧げたのが八十島祭です。
生國魂神社は昔、大阪城のあった場所に鎮座していたと先述しましたが、この大阪城のある場所とは、上町台地の上にあり、古来より流通の要となっている場所でしたが、航海の要でもあった難波津は大小さまざまな島があり、これらの島を大八洲(おおやしま)、つまり日本の国土に見立てて、この場所で執り行われたと言われています。
日本の国の国土すべてをお祀りする皇室の即位儀礼を執り行うことからも、生國魂神社がどれほどのエネルギーの高さでこの国を守ってくれているかがわかります。お参りすることでその恩恵を受けられることは間違いないでしょう。
十種神宝(とくさのかんだから)の生玉・足玉とも関係あり?
十種神宝は、河内国を治めた豪族である物部氏の祖先神として知られる饒速日命(ヒギハヤヒノミコト)が、祖母神であるアマテラスから命じられ、葦原の中つ国と言われていた地上界へ天下りした際に、アマテラスより授けられた10種の、力を持つ宝物です。
この10種は、2つの鏡、1つの剱、4つの玉、3つのヒレから成っているのですが、この4つの玉のうちの2つは、生玉、足玉といいます。
生玉は男性器を象徴し、生命力を司る宝物で、足玉は形が満ちていることを表す宝物であることからも、生玉・足玉が、生國魂神社のご祭神である生島神・足島神と関連があると考えるのが自然でしょう。
土日祝限定!がけっぷち占い
境内社としてお祀りされている「鴫野神社」の提灯には、表に錠前、裏には「縁」の文字が入っています。
「願意は自らの心に誓うものであり、人にべらべらと喋っては叶わない」という真理が現れています。
昔は親の決めた縁談がすべてでしたが、苦しい恋に悩める人の多いのは今も変わらず、自分の気持ちを確かめたり、後押しをしてもらうために生國魂神社を訪れる人は多いでしょう。
しかし、心に錠前をするのも大事ですが、時には第三者の意見が聞きたくなるのも真理です。
鴫野神社は別名「縁切り神社」とも言われ、悪縁を断ち、良縁を結ぶご利益に優れており、土日祝日には「崖縁(がけっぷち)占い」と呼ばれる運命鑑定が行われています。
上町台地の崖っぷちにある、というのが名前の由来だそうですが、恋の崖っぷちにいる人々の強い味方ともなっています。
恋愛だけでなく、仕事上で付き合いのある人間関係や家族間のことなど、人との縁に関することもそうですが、物やできごとなどに関する縁にもご利益があるので、断ち切りたい縁や、繋がりたい縁がある人はぜひ土日祝にお参りに行ってみてください。
鑑定は10時~16時、30分3000円、相性占いは5000円が目安となっています。
鑑定結果が思わしくなかったときは、しっかりと鴫野神社にお参りをし、「心に錠前」絵馬に心願を書いて奉納すると運気が開けます。開運は、現状を知ることから始まります!
鴫野神社には豊臣秀吉の側室として知られる淀姫が足繁く参拝に通ったことから、のちに淀姫自身もご祭神の1柱としてお祀りされるようになりました。そのため、女性の守護としての意味合いが強く、「鴫野の弁天さん」の異名も持っています。
人でも物でも縁に関することならぜひ見てもらいたいですね!
芸能上達を目指す人には織田作之助像も見所!
鴫野神社のご利益には芸能上達もあるため、諸芸での活躍を目指す人に人気があります。芸能上達を目指す方はぜひ、鴫野神社への参拝にあわせて、織田作之助像も見ていかれることをおすすめします。
織田作之助は20世紀を代表する小説家でありながら、33歳の若さで夭折してしまいました。代表作『夫婦善哉』をはじめ、大阪の庶民を描いた作風で人気があります。
成功を経験した人物の像を見ることで、未来の指針が決まったり、なにかインスピレーションを得られるということもありそうですね。
同境内には3000人以上の女性と関係を持ったとされる男、世之介を描いた『好色一代男』を著した作家であり俳人の井原西鶴の像もあります。
大阪三大夏祭りの1つにも数えられる生玉夏祭り
平安時代、宮中祭祀と並行して行われていた神社祭祀の1つ、夏越しの大祓を起源とするお祭りです。
夏越しの大祓は現在でも6月の晦日の日(30日)に多くの神社で行われており、茅の輪と呼ばれる茅(かや)で作った輪をくぐる祓いの儀式をいいます。12月31日の大晦日にも年越しの大祓として同様の祭祀が行われており、半年に一度、身を清めることを目的としています。
天神祭り、住吉祭りとともに大阪の夏祭りの代表で、この夏祭りでは生國魂神社のご祭神をもともとの鎮座地である大阪城のある土地へと「お渡り」していただくことが中核にあります。
毎年7月11日が宵宮となり、翌12日に本宮を迎えます。獅子舞や神輿の行列が華々しいお祭りです。
平安時代から続く祭礼ですが、戦争の影響を受け、長きにわたり休止しており、平成26年に70年ぶりに復刻した幻のお祭りでもあります。70年の思いがわきあがるお祭りの日は、境内のみでも20万人が集まるといわれるほど。参道には1000軒の露天が軒を連ね、子どもも大人も見応えのある2日間になっています。
すごいですね!
まとめ
いくたまさんとして親しまれている生國魂神社には、多くの境内社があり、すべて回れば多くのご利益が得られることがわかりました。
中でも鴫野神社は縁切り・縁結びのご利益で人気があり、土日祝日限定で行われている崖っぷち占いも人気を博しています。
大阪最古の神社であり、国土を守る強いエネルギーに満ちている生國魂神社へお参りに行けば、心・体・魂すべてにエネルギーが充填され、明日からの元気の源になりそうですね!