「何かの用で急にお金が必要になった」
「銀行や消費者金融からの借入は避けたい」
「クレジットカードのキャッシング枠がない」
「このままでは積み立てている保険を解約しなければならない」
緊急にお金が必要になった時、どうやって工面すればよいのか、選択肢の少なさに戸惑ってしまいます。できれば、高い金利で借りるのは避けたいですよね。新しくどこからか借りなくても、お金を工面できる制度があれば・・。
もしみなさんが生命保険に加入し、毎月保険料を支払っているのであれば、「契約者貸付制度」というものが使えるかもしれません。ここで一度、保険の契約書や証書を見直してみましょう。低いリスクでお金を借入できるかもしれません。
今回は生命保険の「契約者貸付制度」について解説したいと思います。
・解約返戻金がある生命保険で利用できる「契約者貸付制度」の概要
・契約者貸付制度は利率低くメリットが非常に大きい借入方法
・注意しなければならない事柄について
・ついでに「単利」と「複利」の違いについて
どうゆうことか全然わかりませ~ん!
「契約者貸付制度」とは?みなさんの保険でお金借りれるの?
まず生命保険でお金を借りる「契約者貸付制度」とはどのようなものかお話しします。この制度、生命保険に加入していれば誰でも使えるものではなく、保険の種類によって可能・不可能があるんです。
契約者貸付制度の概要
保険が満期になったり、解約したりすると「解約返戻金」と言ってお金が戻ってくるものがあります。
「10年経過すると○○万円が戻ってきます!」「○年ごとに○万円還元!」こういう謳い文句の生命保険ありますよね。これは貯蓄性がある保険で、毎月支払っている保険料の中から、その数割を積み立てているんです。保険をかけていて、その一部を金融機関に預けているイメージです。
契約者貸付制度は、そういう保険に加入している人が、「解約返戻金」を前借りできる制度だと思ってください。具体的には以下のような特徴を持っています。
1.「解約返戻金」の70%~90%を上限に借入ができる
戻ってくる予定のお金の7割~9割を上限に借入をすることができます。積み立てている金額が多いほど借入できる金額も増えます。
2.掛けている生命保険を担保にお金を借りる
銀行からの借入の場合、無担保で借りようとすると条件が厳しくなりますが、契約者貸付制度は、加入している生命保険そのものを担保にします。返せない場合は、生命保険で掛けているお金で弁済をします。
3.借入回数に限度なし、目的も不問
解約返戻金の7割~9割の上限金額以内であれば、何度も借りることができます。また、通常の銀行や消費者金融からの借入の場合、何の目的で借りたいのか聞かれることがあり、用途を限定しているものもありますが、契約者貸付制度は、そうした目的は問われません。
どういう目的で借りようと自由です。
4.金融機関で借りるより低金利で安心
契約者貸付制度は積立金の取り崩しではなく、積立金を担保にお金を借りる制度です。したがって、借入の際には金利が発生します。
しかし、通常銀行や金融機関から借入する際には、15%前後の金利が発生しますが、契約者貸付制度はその半分以下のことが多く、低利(2%~8%)で借りられるのが特徴です。もちろん、土地や建物を担保にする必要はありません。
5.申し込み→融資の実行まで早い
契約者貸付制度は、借入の申し込みから実際に振り込まれるまで遅くても3日後です。当日振り込まれることもあり、カードローンの「即日融資」に匹敵するスピードです。もちろん、カードローンのように事前に書類を準備して朝一で申し込んで・・、という段取りを踏まなくても大丈夫です。
6.保険の効果はそのまま継続する
契約者貸付制度を利用しているときに、保険金の支払いに該当することがあっても、本人が亡くならない限り、保険の契約は続行するので大丈夫です。借入中も毎月の保険料は支払っているはずですし。
7.保険会社から直接借りる
契約者貸付制度は、金融機関を通さずに保険会社から直接借入をします。つまり、過去に金融事故(返せなかった等)があっても、そこで跳ねられることはありません。毎月、保険料を納めていれば使える制度です。
8.「本人名義」で借入を行う
契約者自身の生命保険を担保にしてますから、借入ができるのも本人のみです。ただし、「本人名義」ということであり、借入を受けてから誰のために使うかどうかは関係ありません。親が子供名義の保険で借入をしてしまうという例も見受けられます。何かあって困るのは、名義人の子供なんですが・・・。
返済引き落とし口座は本人名義である必要はありません。親や他人の口座からの引き落としも可能です。名義人の保険金を担保にしている、ということが重要なんです。
契約者貸付制度が使える保険、使えない保険
契約者貸付制度はすべての生命保険で使えるわけではありません。期限が来たり解約したりすると解約返戻金が戻ってくるものに限られます。
契約者貸付制度が使える保険→貯蓄性のある生命保険
具体的には、終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険が該当します。都民共済や県民共済は、毎年、清算されて保険金として支払われなかったものが戻ってきますが、これは自分で積み立てていたものではないですよね。
だから、都民共済や県民共済に加入している人はこの制度を使うことができません。
契約者貸付制度が使えない保険→「掛け捨て」の生命保険
具体的には、一般的な生命保険(事故や病気の際の手術や入院保障)、がん保険などの特定疾病保険、事故保険など「掛け捨て」型の生命保険は、自分のために積み立てているわけではないので、契約者貸付制度を利用することはできません。
貯蓄性の有無が、契約者貸付制度の利用の可否に密接にかかわります。みなさんが加入している保険がどちらなのか、今一度確認してみてください。
契約者貸付制度のお金の借り方、返し方
契約者貸付制度を利用したい場合、利用が終わって返済したい場合、どのようにすればいいのでしょうか?借入金の借り方、返し方をまとめてみました。
契約者貸付制度の借り方
1.店頭で申し込む
保険の代理店や直営店に証書と印鑑、本人確認書類等を持っていき直接申し込みをします。これは最も確実な方法です。
2.担当者やコールセンターを利用する
保険を契約した時の担当者、代理店担当者に電話をしたり、保険会社のコールセンターに問い合わせしたりして必要書類を送ってもらいます。数日かかりますが、急ぎでない場合は丁寧に説明もしてくれるはずです。
3.契約者貸付制度専用ダイヤルや専用URL
総合的な問い合わせ窓口ではなく、契約者貸付制度専用の電話やサイトがある保険会社もあります。ここならば、確実に手続きを行うことができます。
4.ATM利用
カードローンのように契約者貸付制度専用カードを発行している保険会社(例:太陽生命 ひまわりカード)もあり、そうしたところであれば、銀行やコンビニATMからすぐ借りることができます。
手続きは以上の 1~4のいずれかでOKです。銀行等から借入するよりはるかに簡単、そう、年収証明(源泉徴収票や確定申告書)も戸籍謄本も、住民票もいりません。だって、もう担保(解約返戻金の積み立て)はあるわけですから
時間もお金もかかるものですからね!
契約者貸付制度の返し方
契約者貸付制度の返済方法は独特です。要は保険の契約終了時までに積立金がもとに戻っていればいいわけです。ローンのように、毎月、元利均等方式か元金均等方式で一定額を返済し続ける必要がありません。
・元金と金利を一括返済
・現金と金利を毎月一定額返済(ローンと同じ)
・金利のみをまず返済
・しばらく放置、お金に余裕ができたら返済
いずれも可能です。しかし、定期的な返済義務がなくても金利がかかります。
後述しますが、契約者貸付の利息は「単利」ではなく「複利」、つまり、元金に利息が付くのではなく、「元金+利息」に利息が付きます。
例)100万円借りて金利が6%の条件で3年放置した場合
【単利】
初年:100万円(元金)×6%=60,000円 そのまま放置すると
翌年:100万円(元金)×6%=60,000円 そのまま放置すると
翌々年:100万円(元金)×6%=60,000円
→金利は3年で6万円×3=18万円
【複利】
初年:100万円(元金)×6%=60,000円 そのまま放置すると
翌年:106万円(元金+利息1年分)×6%=63,600円 そのまま放置すると
翌々年:112万3,600円(元金+利息2年分)×6%=67,416円
→金利は3年で 60,000円+63,600円+67,416円=191,016円
返さなければならない利息がどんどん雪だるま式に増えていきます。しばらく返さないことができますが、さらに苦境に陥る可能性があります。
返済できる余裕ができれば、速やかに返済した方が得ですね。契約者貸付制度の返済自由度が却って自分の首を絞めることがあり得ます。
契約者貸付制度でお金を借りるメリット
契約者貸付制度は、通常の借入やカードローンと比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか?まとめてみました。
低い利息で借入ができる
上述のように契約者貸付制度の金利は2%~8%で、通常の借入やローンの15%~18%の半分~数分の1に抑えられています。クレジットカードのキャッシング(15%前後)と比較しても格段に低く、急な出費があるときにはとても役に立ちます。
各生命保険会社の契約者貸付金利
日本生命 | 年3.75%~年5.75% |
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第一生命 | 年3.00%~年5. 75% |
住友生命 | 年1.55%~年5.75% |
明治安田生命 | 年2.15%~年5.75% |
かんぽ生命 | 年2.50%~年6.00% |
ソニー生命 | 年3.25%~年8.00% |
プルデンシャル生命 | 年1.75%~年6.25% |
借入、振込までの期間が短い
借入を申請してから実際に入金されるまで、即日~1週間程度で入金されます。これは、銀行などから借入するよりもはるかに早く、「即日融資」を謳っている消費者金融に匹敵します。
もちろん、そうした即日融資を謳っている消費者金融の金利は、利息制限法の上限18%がほとんどですから、その数分の1の利率で借りられる契約者貸付を利用しない手はないということです。
保険そのものは継続する、積立額も減らない
契約者貸付制度を利用しても、入っている保険はそのまま継続します。保険金をもらうようなことがあっても、それは有効です(保険金が手に入る)。
また、返済さえできれば、それまで積み立てた金額も減りません。あくまで、積立額は担保であり、返済できれば担保はそのままです。土地を担保にお金を借りたからと言って、(返済できれば)土地がなくなることがないのと一緒です。
借入のための審査がない
銀行や消費者金融から借入をする場合、借入履歴や返済能力、年収等の審査がありますが、契約者貸付制度の場合、審査はありません。生命保険に加入していることで本人確認は取れていますし、身元もはっきりしています。
現に生命保険の掛け金を支払い続けているわけで、返済については最悪そこから弁済すればいいので、審査をする必要がない、といってもいいのかもしれません。
信用情報照会されない
このように、実質審査がないので、借入の際に行う信用情報照会もありません。つまり、過去に金融事故を起こしている(返済できなかった、遅れた)人や、自己破産した人でも、生命保険をかけ続けている限り、調べられることがありません。
通常のローンが借りられない人も、契約者貸付制度ならば利用できる可能性が高いです。
フレキシブルな返済ができる
借入した額が解約返戻金を超えない限り、利息は付いていきますが、毎月決まった額の返済義務があるわけではありません。まとまったお金が入った時に返済すればOK。つまり「この月は口座から落ちなかった」(返済が遅れた)ということが無く、それによってデメリットを被ることもありません。
金利さえ払ってくれれば、返済のタイミングはフレキシブルにできます。
契約者貸付制度でお金を借りるデメリット
一方で、契約者貸付制度にはデメリットと言いますか、注意点もあるので押さえておきましょう。
積立額が少なければ借入可能額も少ない
契約者貸付制度は、自分で支払った掛け金の積立枠内で借入ができるものです。当然ですが、支払って間もないころは、積立額も少なく、借入可能枠も少ないです。支払期間によっては、借入そのものができないこともあります。
また、すべての生命保険で借入ができるわけではありません。掛け捨てタイプは(積み立ててないのですから)、何をどうやっても契約者貸付制度は利用できないので注意してください。
借入金+金利が解約返戻金を超えると、生命保険が失効する
解約返戻金の範囲内でしか借入ができませんが、そのまま放置していると金利が加算されていきます。上述のように契約者貸付制度は「複利」なので、想像以上に支払利息が膨らんでしまう怖れがあります。
そして、
「借入金(元金)+支払利息(金利)>解約返戻金」
となってしまうと、担保評価額以上の返済義務が発生することになり、積立金の担保はその機能を果たして、生命保険解約、失効によって強制的に返済されます。債務を自己管理できる人はいいのですが、それができない人、放置してしまう人は、生命保険の権利そのものを失ってしまいます。
失効後、返済をして、再加入しても、30歳で入った場合の掛金と45歳で入った時の掛金は違いますよね(後者の方が高い)。結局将来にわたって大損をしてしまうことになります。
保険金受取やお祝い金よりも返済が優先され、お金を受け取れない
生命保険本来の保険金事由(保険金を受け取れる事故や病気)や、健康で10年過ごした「お祝い金」などを受け取れるときに、既存の契約者貸付があると、その返済に優先的に回されてしまいます。
つまり、本来保険金を50万円受け取れるケースが発生した時に
借入が40万円ある→50-40=10万円しかもらえない(40万円の借入は消える)
借入が60万円ある→50-60<0 1円ももらえない(債務は10万円に減る)
昔契約した保険【お宝保険】は予想外に利率が高いかも?
実は解約返戻金は、積み立てた額そのままではなく、銀行のようにそのお金を運用して利息が付いて戻ってきます。ただし、マイナス金利、ゼロ金利の現在はほぼ無視できるのですが、バブル期前後の金利は高く、そのときに契約した保険の解約返戻金は、かなり利息が付いてます。これを「お宝保険」と言います。
それはいいことなのですが、契約者貸付制度を利用する場合、借入の利率は今のマイナス金利ではなく、当時の高い利率が適用されます。
つまり、当時の保険での契約者貸付を利用する場合、保険会社が設定している上限金利になることが多いです。
それでも、今、新規に銀行等でローンを組むよりはるかに金利は低く、得なことには変わりないのですが、もし複数の契約者貸付制度が利用できる保険に入っている場合、より最近加入したものの方が金利を低く抑えられるはずです。
よくよく見ると「デメリット」というほどのものではなく、注意していればまったく問題ないです。まぁ、必要以上の借入をするとリスクが生じるので、その点は注意してください。新規にローンを組むよりはるかに有利な借入ができるはずです。
以上、メリット、デメリットを表にまとめました。
メリット | ●低金利で借入が可能 ●申請→入金までが早い ●保険はそのまま有効 ●これまでの掛金、積立は減らない ●借入の際の審査がない ●信用情報機関に照会が行かない ●返済が好きなタイミングでできる |
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デメリット | ●加入してすぐは借入可能額が低い ●債務(借入金+利息)が積立(解約返戻金)を超過すると保険が失効(強制解約)する ●返済が保険金受取に優先する ●お宝保険は利率が高い |
参考 小規模企業共済の借入との比較
最後に、契約者貸付制度に似ているもので「小規模企業共済」の貸付制度と比較を行います。
小規模企業共済とは、企業年金などがない個人事業主、フリーランサー、零細企業経営者のための老後の積立(退職、廃業後、退職金や年金として受け取る)なのですが、こちらも、掛金に応じて(やはり積立金額の70%~90%)、緊急時に融資を受けることができます。
会社員や公務員は加入できないですが、緊急時の借入利率は契約者貸付制度よりもさらに低く、0.9%~1.5%となっています(借入の理由で利率が変化)。
もし、生命保険にも、小規模企業共済にも加入している人がいて、緊急にお金を借入する必要があるなら、まず小規模企業共済の借入を考えてみてはいかがでしょうか?
契約者貸付制度 | 2.0%~8.0% |
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小規模企業共済貸付 | 0.9%~1.5% |
こちらのほうが得ですよね。
新規に銀行や消費者金融から借入をしなくても、今、みなさんが行っている様々な契約から借入につなげることができるものがあるかもしれません。ぜひ一度、確認してみてください。
生命保険でお金を借りる方法!契約者貸付制度のメリットとデメリット まとめ
・解約返戻金(積立の返金)がある生命保険ではその範囲内で借入ができる契約者貸付制度というものがある
・契約者貸付制度は積立てた掛金の70%~90%まで借入をすることができる
・銀行や消費者金融から借入をするよりもはるかに低い金利で借りられる
・審査もなく、返済計画も好きに立てられる
・一方で自分でしっかりした返済計画を立てないと保険そのものが失効する
・返済は保険金受取に優先する、いざというとき保険金が受け取れない可能性も
・バブル期前後に契約した保険の場合、高い金利がマイナスに作用することも
・掛け捨て型の保険では利用できないので注意する